Day 2

ループの4層

読了+体験+課題: 20〜30分

昨日、同じ賢さのAIでも「回し方」で結果が変わることを体験しました。 では、安心して任せられるようになるまでに、AIに何をどう渡せばよいのでしょうか。 今日はそれを4つの層に分けて考えます。イメージするのは、新人に仕事を任せる場面です。

今日のゴール

まずは体験

経費チェックAIをもう一度雇います。申請は昨日と同じ6件、見つけるべき問題は3件 (会食の上限超過・90円の金額ずれ・規定で判断できない深夜タクシー)。 ただし今日は、任せ方を1段階ずつ変えます。「層を足す」を押すたびに、AIに渡すものが1枚増えます。 結果がどう変わるか見てください。

体験: 渡すものを1枚ずつ増やす

何が起きたのか

層が1枚増えるたびに、できるようになったことを振り返ります。

4つの層

新人にたとえると経費チェックAIでは
指示(プロンプト)口頭のお願い「チェックしておいて」
文脈(コンテキスト)机に置いておく資料経費規定・過去の判定例
作業環境(ハーネス)道具と権限の整備台帳への接続・押せるボタンは3つだけ
ループ仕事の回し方の取り決め全件終わるまで回して、報告して止まる

ここから、覚えておきたい原則が2つ出てきます。

原則1: 下の層の不足は、上の層では補えない。 規定を知らないAI(文脈の不足)を、どれだけ丁寧に回しても(ループの工夫)、規定違反は見つかりません。 AIの答えに不満があるとき、私たちはつい指示の言い回しばかり直したくなりますが、 足りないのはたいてい下の層、つまり渡していない資料や、確かめる道具のほうです。

原則2: 作業環境は「できることを増やす」と同時に「できることを絞る」。 台帳への接続は能力を増やす整備です。一方「押せるボタンは3つだけ」は制限する整備です。 勝手にお金を動かす・記録を消すといった操作は、そもそもできないようにしておく。 間違えることを前提に、間違えても被害が小さい場所で働いてもらう。これが作業環境の発想です。

昨日の言い方を借りれば、Day1は「賢さではなく回し方」でした。 今日はその手前、「賢さではなく、渡すもの」です。

チャットしか使わなくても、2層は今日から変えられる

4層のうち、指示と文脈は、いつものチャット画面だけで改善できます。 規定・過去の例・判断基準を貼り付けてから頼むだけで、AIの判定根拠は「世間の相場」から「あなたの会社のルール」に変わります。 作業環境とループは道具の力を借りる領域で、Day6で実物を見ます。

今日のまとめ

ミニ課題(5〜10分)

  1. 昨日選んだ自分の仕事について、いつものAIへの頼み方が4層のどこまで渡せているか、表に印をつけてください。 多くの場合、指示だけ、あるいは指示+わずかな文脈で止まっているはずです。
  2. その仕事の「文脈」にあたるものを3つ書き出します。 規定・マニュアル・過去の完成例・NG例・判断基準表など、新人の机に置いておく資料を思い浮かべてください。
  3. (ハンズオン)昨日と同じ依頼を、書き出した文脈を貼り付けてから頼み直してみてください。 答えの根拠がどう変わったかを見比べます。変わらなければ、それは文脈ではなく別の層が足りないサインです。

次回

Day3「ループの部品6つ」。今日の4層を毎日回し続けるには、鼓動・個室・手順書・接続・検証役・記憶という部品が要ります。 経費チェックAIの「小さな会社」を組み立てて、部品を抜くと何が壊れるかを見ます。