Day 3
ループの部品6つ
昨日は、1回の仕事を安心して任せるための「渡すもの」を4層で考えました。 今日はその先です。経費チェックAIを毎日、あなたの手を借りずに回し続けるには、何が要るのでしょうか。 答えは6つの部品に分解できます。今日は部品を1つずつ抜いてみて、何が壊れるかを確かめます。
今日のゴール
- 6つの部品「鼓動・個室・手順書・接続・検証役・記憶」を役割つきで言えるようになる
- 部品が欠けたときの「症状」から、どの部品が足りないかを逆引きできるようになる
- 自分の仕事を任せる場合の6部品対応表を作る
まずは体験
経費チェックAIの「小さな会社」を組み立てました。6つの部品はすべてONの状態です。 まずそのまま「1週間回す」を押して、順調な週報を見てください。 そのあと、部品をどれか1つだけOFFにして回し直すと、週報に症状が現れます。全部試してみてください。
6つの部品
| 部品 | 役割 | 欠けたときの症状 |
|---|---|---|
| 鼓動(オートメーション) | 決まった時刻や合図で、自動で仕事を始める | 誰かが起動係になる。忘れると仕事が溜まる |
| 個室(ワークツリー) | 複数のAIが同じ仕事にぶつからないよう隔離する | 二重処理・上書き事故 |
| 手順書(スキル) | 毎回説明しなくて済むよう、決まりごとを固定する | 依頼文が肥大化し、説明漏れの日は判定がぶれる |
| 接続(コネクタ) | 台帳やデータベースをAIが自分で見に行けるようにする | 人間がコピペ係になり、仕事が半分戻ってくる |
| 検証役 | 作る役と別の目で、結果を点検してから確定する | 見落としがそのまま外へ流れ、信用を失う |
| 記憶 | 処理済み・過去の判断を会話の外に記録して引き継ぐ | 毎朝ゼロから。同じ質問を何度もしてくる |
いちばん壊れやすいのは「記憶」
6つの中で、うっかり忘れられやすく、欠けたときの被害が地味に大きいのが記憶です。 チャットAIとの会話の中だけに積み上げた記憶は、会話が終われば消えます。 人間の職場で、引き継ぎをノートや台帳に書くのと同じで、 明日も続く仕事の記憶は、会話の外に書き残す必要があります。 処理済みリスト、判断の記録簿、進捗メモ。形は何でもかまいません。 「AIが昨日のことを覚えていない」と感じたら、それはAIの物覚えの問題ではなく、記録簿を用意していないという設計の問題です。
手順書は、失敗のたびに厚くなる
手順書には、表に書いた「毎回の説明を省く」だけではない、もう一つの使い方があります。 同じ失敗を二度させないために、失敗のたびに書き足すことです。 たとえば経費チェックAIが、ある領収書を「問題なし」で通してしまい、あとで差し戻しになったとします。 その1件をあなたが手で直して終わりにすると、来週も再来週も、同じ見落としが起きます。 かわりに「この種類の領収書は要確認」と手順書に1行足しておけば、次からAIが自分でそこを見ます。
1件の失敗を、その場かぎりの手直しで消すか、手順書への1行にして仕組みに残すか。 面倒なのは最初の1回だけで、あとはずっと効きます。 差し戻しの理由が毎回同じだと気づいたら、それは手順書に書き戻すサインです。 こうして手順書は、ループを回すほど厚く、賢くなっていきます。
検証役は「別の目」であることに意味がある
Day1で見たとおり、AIは自分の見落としに自分では気づけません。 だから点検は、作った本人の「見直し」ではなく、別の役割としての検証役に任せます。 人間の職場でも、書いた本人の校正より、別の人の校正のほうが誤字を見つけるのと同じ理屈です。 この「作る役と点検する役を分ける」発想は、明日の「暴走と停止」でさらに重要になります。
今日のまとめ
- 毎日回すためには「鼓動・個室・手順書・接続・検証役・記憶」の6部品が要る
- 症状から逆引きできる: 起動忘れは鼓動、コピペ係化は接続、同じ質問の繰り返しは記憶の欠け
- 明日も続く仕事の記憶は、会話の外に書き残す。点検は作った本人ではなく別の目に任せる
- 手順書は書いて終わりではない。同じ失敗が起きたら、その場で直さず手順書に書き戻して、二度と起こさせない
ミニ課題(5〜10分)
-
自分の仕事を任せる場合の6部品対応表を埋めてください。
- 鼓動: いつ・何をきっかけに始まる?
- 個室: 同時に走ると困るものは何?
- 手順書: 毎回説明している決まりごとは何?
- 接続: AIが自分で見に行けると助かる資料はどこにある?
- 検証役: 結果を何と照合すれば点検になる?
- 記憶: 明日に引き継ぐべき記録は何?
- (ハンズオン)いつものチャットAIに、こう聞いてみてください。 「この仕事を毎日続けるとしたら、何をどこに記録しておくべきですか?」 返ってきた答えが、あなたの仕事の「記憶」の設計案です。使えそうな項目を対応表に足してください。
- 直近で、AIに任せた仕事が「同じ失敗」を繰り返したことはありませんか。 あれば、その失敗を防ぐ一文を考えて、対応表の手順書の欄に書き足してください。 それが、あなたの手順書に積み上がる最初の1行です。