Day 3

ループの部品6つ

読了+体験+課題: 20〜30分

昨日は、1回の仕事を安心して任せるための「渡すもの」を4層で考えました。 今日はその先です。経費チェックAIを毎日、あなたの手を借りずに回し続けるには、何が要るのでしょうか。 答えは6つの部品に分解できます。今日は部品を1つずつ抜いてみて、何が壊れるかを確かめます。

今日のゴール

まずは体験

経費チェックAIの「小さな会社」を組み立てました。6つの部品はすべてONの状態です。 まずそのまま「1週間回す」を押して、順調な週報を見てください。 そのあと、部品をどれか1つだけOFFにして回し直すと、週報に症状が現れます。全部試してみてください。

体験: 部品を抜くと何が壊れるか

6つの部品

部品役割欠けたときの症状
鼓動(オートメーション)決まった時刻や合図で、自動で仕事を始める誰かが起動係になる。忘れると仕事が溜まる
個室(ワークツリー)複数のAIが同じ仕事にぶつからないよう隔離する二重処理・上書き事故
手順書(スキル)毎回説明しなくて済むよう、決まりごとを固定する依頼文が肥大化し、説明漏れの日は判定がぶれる
接続(コネクタ)台帳やデータベースをAIが自分で見に行けるようにする人間がコピペ係になり、仕事が半分戻ってくる
検証役作る役と別の目で、結果を点検してから確定する見落としがそのまま外へ流れ、信用を失う
記憶処理済み・過去の判断を会話の外に記録して引き継ぐ毎朝ゼロから。同じ質問を何度もしてくる

いちばん壊れやすいのは「記憶」

6つの中で、うっかり忘れられやすく、欠けたときの被害が地味に大きいのが記憶です。 チャットAIとの会話の中だけに積み上げた記憶は、会話が終われば消えます。 人間の職場で、引き継ぎをノートや台帳に書くのと同じで、 明日も続く仕事の記憶は、会話の外に書き残す必要があります。 処理済みリスト、判断の記録簿、進捗メモ。形は何でもかまいません。 「AIが昨日のことを覚えていない」と感じたら、それはAIの物覚えの問題ではなく、記録簿を用意していないという設計の問題です。

手順書は、失敗のたびに厚くなる

手順書には、表に書いた「毎回の説明を省く」だけではない、もう一つの使い方があります。 同じ失敗を二度させないために、失敗のたびに書き足すことです。 たとえば経費チェックAIが、ある領収書を「問題なし」で通してしまい、あとで差し戻しになったとします。 その1件をあなたが手で直して終わりにすると、来週も再来週も、同じ見落としが起きます。 かわりに「この種類の領収書は要確認」と手順書に1行足しておけば、次からAIが自分でそこを見ます。

1件の失敗を、その場かぎりの手直しで消すか、手順書への1行にして仕組みに残すか。 面倒なのは最初の1回だけで、あとはずっと効きます。 差し戻しの理由が毎回同じだと気づいたら、それは手順書に書き戻すサインです。 こうして手順書は、ループを回すほど厚く、賢くなっていきます。

検証役は「別の目」であることに意味がある

Day1で見たとおり、AIは自分の見落としに自分では気づけません。 だから点検は、作った本人の「見直し」ではなく、別の役割としての検証役に任せます。 人間の職場でも、書いた本人の校正より、別の人の校正のほうが誤字を見つけるのと同じ理屈です。 この「作る役と点検する役を分ける」発想は、明日の「暴走と停止」でさらに重要になります。

今日のまとめ

ミニ課題(5〜10分)

  1. 自分の仕事を任せる場合の6部品対応表を埋めてください。
    • 鼓動: いつ・何をきっかけに始まる?
    • 個室: 同時に走ると困るものは何?
    • 手順書: 毎回説明している決まりごとは何?
    • 接続: AIが自分で見に行けると助かる資料はどこにある?
    • 検証役: 結果を何と照合すれば点検になる?
    • 記憶: 明日に引き継ぐべき記録は何?
  2. (ハンズオン)いつものチャットAIに、こう聞いてみてください。 「この仕事を毎日続けるとしたら、何をどこに記録しておくべきですか?」 返ってきた答えが、あなたの仕事の「記憶」の設計案です。使えそうな項目を対応表に足してください。
  3. 直近で、AIに任せた仕事が「同じ失敗」を繰り返したことはありませんか。 あれば、その失敗を防ぐ一文を考えて、対応表の手順書の欄に書き足してください。 それが、あなたの手順書に積み上がる最初の1行です。

次回

Day4「暴走と停止」。回る仕組みができたら、次は「止まる」を作ります。 完了条件が曖昧なAIがどうなるか、あなた自身の手で止めてもらいます。