数週間後
回し始めてから
Day7で契約書を書き上げ、最初のループを回し始めたあとのページです。 すぐに読む必要はありません。しばらく動かしてから戻ってきてください。 巻末の用語対照表は、いつ開いても構いません。
数週間後の健康診断: 採用率
小さく始めたループが数週間回ったら、続けるか、広げるか、直すかを決める番です。 このとき見る数字を間違えないでください。何周回したか、何件処理したか、どれだけ作ったか。作業量はどれも、あまり当てになりません。 見るべきは採用率(acceptance rate)。AIの提案のうち、あなたが採用した割合です。
採用率が半分を下回っているなら、そのループはまだあなたの時間を節約していません。 提案の半分以上を差し戻すということは、結局あなたが重い点検をしているということだからです。 打ち手は5つ。どれもすでに学んだ場所にあります。
- 担当範囲を狭くする(契約書のSCOPE)
- 指示を明確にする(Day2の指示の層)
- 文脈を厚くする(Day2の文脈の層)
- 検証役を強くする(Day3の部品)
- 禁止事項を増やす(契約書のSCOPE)
採用率を数えるのに道具は要りません。1周ごとに、採用したか差し戻したかをひとこと書き残すだけです。 番外編で紹介するループ日誌のメモ欄は、この置き場としてそのまま使えます。
次の一歩
このコースの模擬体験でAIが動かしていたような仕組みは、実際の道具で作れます。 たとえば、Day6のリプレイ2で見た作業ループを動かしていたのは、 ターミナルで動くAIエージェントと呼ばれる種類の道具です(Claude Code など。 チャットのAIと同じ会社が出している、ファイルやツールを扱えるAIです)。 具体的な導入手順はすぐ変わるので、ここには書きません。公式ドキュメントが最新です。 道具を触り始めたら、このコースで学んだ言葉、つまり完了条件・観測・停止条件・担当範囲が、そのまま設計図として通用します。
付録: 用語対照表
卒業後に英語の記事やドキュメントを読むときの橋です。この教材の言葉と、世間で使われる言葉の対応表です。
| この教材の言葉 | 原語 | 一言でいうと |
|---|---|---|
| ループ | loop | 基本サイクルを停止条件まで繰り返す仕組み |
| ループエンジニアリング | loop engineering | ループ全体(観測・停止・相談を含む)を設計する実践 |
| 基本サイクル | agent loop | 目的→行動→観測→修正→停止の5段階 |
| 観測 | observation / feedback | 行動の結果を確かめて得る情報。失敗も含む |
| 完了条件 | done condition | 終わったと客観的に判定できる条件 |
| 停止条件 | stop condition | ループを止める条件の総称 |
| 暴走 | runaway | 終わりの定義がないまま回り続ける状態 |
| 偽完了 | premature completion | 完了条件を満たさないまま「終わった」と宣言して止まる状態 |
| 非常ブレーキ | hard stop | 回数上限・無進捗検出・予算上限の3種 |
| 人間への相談 | escalation | 判断できない案件を人間に引き渡すこと |
| 指示 | prompt | AIへの1回の依頼文 |
| 文脈 | context | AIが前提として見る情報環境 |
| 作業環境 | harness | 道具・ルール・チェックを整えた環境 |
| 鼓動 | automations | ループを自動で動かす起動の仕組み |
| 個室 | worktree | 複数のAIが衝突しないための隔離 |
| 手順書 | skill | 毎回説明しないための固定した知識・手順 |
| 接続 | plugin / connector | 外部の道具やデータへのつなぎ込み |
| 検証役 | verifier / sub-agent | 作る役と別に点検する役 |
| 記憶 | memory / state | 会話の外に残す進捗・判断・記録 |
| ノーチェックループ | open loop | 検証なしで回るループ。デモ用 |
| チェックつきループ | closed loop | 1回ごとに検証が入るループ。実務の基本形 |
| レビュー役つきループ | review loop | 並走する検証役が指摘を返すループ |
| 輪の中 | human in the loop | 人間が毎回チェックする働き方 |
| 輪の上 | human on the loop | 人間が仕組みを設計・監視する働き方 |
| 輪の外 | human out of the loop | 任せきりの状態 |
| 尋問 | interrogation | AIに質問して自己説明させる点検法 |
| 規範モデル | normative model | 人間だけが持つ理想像・価値基準・過去の判断 |
| 理解負債 | comprehension debt | AIの成果物と人間の理解の差。速いループほど速く積み上がる |
| ループ契約書 | loop contract | 6項目でループを定義する文書 |
| 半自動ループ | semi-automated loop | 鼓動だけを人間が担い、残りの部品をAIが回すループ |
| 全自動ループ | fully automated loop | 鼓動を含むすべての部品を機械が担うループ |
| 採用率 | acceptance rate | AIの提案のうち人間が採用した割合。ループの健康診断指標 |